(書きかけの小説「吉祥寺・ル・ヴォワール」第一話)
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(あぁ、そういうこと。。そりゃそっちを選ぶよな。。だって私は部屋にいるときは化粧もしないし、あんたの前で堂々とすね毛を剃るし、シャワー浴びずに寝ることだってしょっちゅうだし。。そりゃあそっちを選ぶよな。。)
「ごめん。悪いって思ってるよ。。でも、あれじゃね。お互いけっこー楽しかったし。ねぇ?」
「、、、うん。そうだね。」
(そのニヤけ顔が好き。その軽さが好き。)
「あーどうする?冷蔵庫と電子レンジ持ってく?あれ買ったの、お前のカードだよねぇ?」
「、、いいよ。置いてく。使って。」
(そのいつもシャンプーの匂いのする女とさ。。)
「まじぃぃ?金、、払うよぉ。今ないけど。。今度さぁ。」
「いいって。ホントに。私、実家に家電持っていってもしかたないじゃん。」
(こいつが語尾をのばすときは、大抵思ってもいないことを言うときだ。私にはわかるんだ。)
「んじゃ俺バイトだから、鍵、郵便受け入れといてよ。たまにはメールしろよな。水嶋とか皆で飲みいこーぜぇ。」
「わかったぁ。またね。バイトがんばって。」
アイツは、いつものリュックといつものニューバランスといつもの細いパンツと、いつものくせっ毛でバイト先のエロDVD屋へ向かっていった。時給900円の。
私はというと、話の流れ的には部屋にあるあいつの大事なギターを壊したりとりあえず意味もなく部屋を荒らしてみたりしそうなものだが、そんな気も起きず。なんだかわからないけどコーヒーを落としていた。
そしていつものちゃぶ台だかテーブルだかわからないような水色のテーブルの上の光熱費の請求書やら、爪切りやら、テレビのリモコンやらを丁寧にどけてコーヒーを飲んだ。
あまりの土曜のうららかな午後さ加減に、思わず声をだして「うーーーん、平和やぁ。」とか言ってみたりして。
話の流れ的には口紅で鏡に「クソヤロー!!」とでも書いてみようかとも思ったが、何よりまず私は口紅というものを持ち合わせていませんので無理なのである。
もしそんなことしてもアイツのリアクションなんて知れてるのだ。
「うわぁ、かっこぃぃじゃぁん。」
である。
いっそ「エイズの世界にようこそ。。」とでも書いてやろうか。
否、そんなことをしても「おもしれぇぇ。」位のものである。
何もしない。何もしないよ。
意味がね。意味がないもの。
でも、一つだけ私はやってやったの。復讐してやったの。
テーブルの上に飲み終わったマグカップをそのままにしてやったの。
ざまあみろ。
そんなんいっつもなのだが。
晩ご飯食べても食器はほったらかしで、そのままテレビみてビール飲んでセックスして。次の日の晩ご飯までほったらかし。
小さな復讐。乙女レジスタンスわたし。
かっこいいぜ。
もう私はこの駅に降りることはないだろう。
ってことは井の頭線に乗ることもなくなるんだ。
けっこう好きだったんだけどなこの電車。
もう私はこのスーパーで閉店間際のお惣菜を買ったりしないのだ。
ってことはアイツが自分でスーパーに?カゴもって?
くっくっく。笑える。似合わん。
きっとやつはスーパーごときでも髪をかきあげたりしてカッコつけるに違いない。くっくっく。だっさ。滑稽なこと、この上ない。
でも。。かわいい。。
あっ。
そうだ。違うのだ。
アイツはあの女と一緒にスーパーに行くのだ。
ちーん。。
駅のキヨスクでなんとなくワンカップを買ってやった。
ワンカップの瞬間熱燗機能に感動した。
ホームのベンチで堂々と飲む。あつい。きつい。だが美味い。
マフラーに少し零したら、終電のおっさんの匂いがした。
私は声に出して言った。
「くぁぁぁ~染みるゼっ!!ちくしょーー!!吉祥寺なんてもう来ねーぞっ!!井の頭公園の馬鹿ヤローー!」
つづく