(書きかけの小説「吉祥寺・ル・ヴォワール」第二話)
俺は水嶋久章。育ち盛りの25歳。7月生まれのA型。
職業エロビデオ屋の店員。っつーかバイト。
彼女、一応、あり。そんなに好きってわけでもねーけど。
土本美雨。24歳。おっぱい大きい。
好きなもの、お金。トマトソースのパスタ。
好きなAV女優、みひろ。
みひろはそんなにおっぱい大きくないじゃん!って?
あぁ。だってミューは顔がかわいかったからなんとなく。。ね。
つんざく音。ほとばしる低音。タバコとマリファナのまざった匂い。
へたくそなDJ。いちゃつく不細工カップル。
(おまえら、、なにが楽しくて騒いでんだよ。気持ちわりぃ。なにが「かわいい子いっぱいいるからさぁ。」だよ!茉莉のアホが!!)
「ねぇ。ライターもってる?」
「ん、、、あぁ、持ってます。どうぞ。。」
(正直、ビビった。)
「何これ?おっぱい星人、、?こんなライター初めて見たぁ。」
(ああこれ?うちの店長の趣味でレジの横で売ってるライターでさぁ。あっ俺エロビデオ屋で働いてんだけどぉぉ、、とは言えん。。)
「べつに俺のじゃないよぉ。友達が置いてってさぁ。うけるっしょ。」
(俺はよくこの手の嘘をつく。前に先輩にipodを見られて、こっそり聞いていたモーニング娘。について言及されたときもそう言った。)
「ふーん、、ひとり?つまんなそうだね?踊んないの?」
「あぁーー。ちょっち疲れちゃって。一人じゃないけど。ラウンジでさっきまで回してたやつ。友達。もう来ると思うんだけど。」
「あ、ミューその人見てたぁ!青いパーカーの人でしょ? かっこいいよねぇ、なんか細くて。」
(、、、まただ。茉莉はビミョーにモテる。昔から。いつのまにかDJなんかやりやがって。エロビデオ屋の店員の癖に!だいたいあいつバンドやってた頃は「DJなんて糞だっ!ロックじゃねぇ!」とか言ってたんに。。)
「。。。ま、あ、ね。ってかミュー?ってなに?あだ名?」
「本名だよ。土本美雨。ミウだからミュー。かわいいでしょ?」
(、、この子、おっぱいデカイ。しかもけっこうかわいい。)
「ふーん。変な名前。自分のこと名前で呼ぶやつ久しぶりだわ。
んで、ミューちゃんは一人なん?友達といっしょ?」
「んーん、ミューひとりだよ。たまに飲みたくなっちゃって来るんだぁ。でも今日あんまし好きな感じじゃないからもう帰ろうかなぁ。。君はぁ、、そっかDJの人来るんだっけ?じゃやっぱり帰ろうかな、、」
(。。。)
「ん、でもアイツ打ち上げとかあるし後から彼女も来るって言ってたし、俺もそろそろ帰ろっかなぁ、、、
ジロっ
(。。。睨まれた。見透かされたか?いや、この女見るからに頭悪そうだし、、)
「じゃー飲み行こっか!おっぱい星人君!どっか近くの店知ってる?」
「あ、、あぁ!知ってる知ってる!きったねぇ店だけど、朝までやってるし!」
「じゃー行こぉー!イェーイ!なんて言う店?六本木?」
「うん。、、かおたんって言う店なんだけど、、。」
「かおたん。。。それラーメン屋じゃん!!」
「ははっ、、駄目?」
「いいよ。行こっ。あれ?君の名前は?」
「チャー。」
「チャーってなに?あだ名?」
「本名だよぉ。水嶋久章。久章だからチャー。」
「変な名前ぇ。」
そのまま今に至る。もう2年くらい、、か?
ミューは顔もかわいいし、めんどくさくねーし、たまに飯も作ってくれるし、派遣の仕事で俺の倍くらい稼いでるし、アレもアレなほうだし。
まぁ俺は特別好きってわけでもねーんだけど、ミューは俺のことが好きで好きでたまらないようなので付き合っている。
そのうち結婚してもいいかなぁーなんて、なーんとなく思っている。
言わねーけど。程度のものさ。
いつまでもエロビデオ屋もなぁ。と思いながらもダラダラすぎていくのがどうも俺には合っているらしく。まぁまぁ楽しくやってる。
「水嶋ぁ。店長がブリッジで飲んでるから来いってよ。」
「あー?うーん。今日俺やめとくわ。」
「なーんでよ!おごりだぜ?多分。行こーぜ?」
「あー、んーでも帰るわぁ。わりぃ。茉莉、一人で行ってこいよ。」
「あんだよまた巨乳のミューちゃんとエッチかよ。ミューちゃんも呼べばいいじゃん。」
「うるへーよ、ミューちゃんとか言うな。誰がお前に会わせるか!お前こそ晴子ちゃんまってんじゃねーのかよ。」
「いいんだよ晴子なんて別に。いいじゃんか!会わせてくれたって!だいたいそんなに好きじゃねーんだろ?彼女のこと。」
「あ?別に好きじゃねーって言ってんじゃん、って!うわっ雨すげーし!寒みーし!俺走るわぁ。じゃなぁ茉莉ぃ。」
(んでも走って帰るんじゃねーかよ。何をかっこつけてんのかねぇ、、、好きなくせによぉ、、ってまぁいっか。って俺もいいかげんはっきりしねーとな。晴子にいつ言おう。。。。。ま、いっかぁ。)
「じゃーなぁ、水嶋ぁ。」
(うわぁぁ、、やっぱコンビニで傘買うべきだったか?寒すぎる。。もう11月だしな。ミューの奴もう帰ってきてっかな。)
カン、カン、カン、ガチャ。パチっ。
(あれ、部屋電気ついてねー。んだよまた残業か。まじびしょぬれだし。たまには湯船にお湯はるかぁ。。ミューも入りたいだろうし。。。)
ジャーーー
(風呂たまる間にぃパスタでもつくってぇ、、あ、まだホールトマトあったか?二人分もねーか?先に買ってくっかなぁ、、)
「ん?」
(あれ?。。。なんだ?。。なんか部屋がすーすーすんぞ?)
ジャーーー
俺はいつものように暗い部屋の壁を手探りでさわり、蛍光灯のスイッチをつけた。
(あれ?なーんか変だ。)
妙に部屋が片付いてる。
ジャーーー
なんかが無い。
(あ。。)
鏡の前に理科室の薬品だなみたいに並んだミューの自慢の化粧品群が無い。
(あれ。。)
ジャーーー
(まさかっ。なぁ。。)
クローゼットにミューの服が無い。靴も無い。ミューのこだわってたシャンプーも。3つもあったヘアアイロンも。絵の具セットみたいなマニキュアも。。。。
(。。。。空き巣か?。もう11時か、もう仕事終わってるよな。。)
トゥルルル、、、、トゥルルルル、、、、
ジャーーー(風呂、、まだたまんねーか、、)
トゥルルル、、、、トゥルルルル、、、、
(まだ終わってねーか?)
トゥルルル、、、、トゥルルルル、、、、
トゥル、、(ん、、繋がった)
「もしもし?ミュー?仕事終わったん?あのさー今帰ってきたらさー」
ジャーーー
「ごめん!ごめん、チャー君。ホントにごめん!わたし好きな人ができたから出て行くね。。ごめんね!」
「、、、は?なに?」
「でもチャー君、わたしのことそんなに好きじゃなかったもんね?がんばってね。イラスト、なんかに載ったら教えてね。応援してるから。じゃーね。いままでありがと。」ブチ。。。
(、、、、な、んだこれ。。。わたしって。。自分のことわたしって。。ミューミュー言ってたじゃねーか。。ポップコーンの食感みてーに。。ん?俺、、捨てられた??)
ジャーーーーーーーーーーーーーーーー
ザッ、ザブ
「あ。。溢れた。。。。。。。。。。。
とりあえずホールトマト。。。。。。。。。。。。。。。」
俺は水嶋久章。育ち盛りの25歳。7月生まれのA型。
職業エロビデオ屋の店員。っつーかバイト。
彼女、なし。ほやほや。
是、正に、青天の霹靂。。
つづく